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便秘を改善する食事と生活習慣|消化器内科専門医が解説【名古屋市中区・伏見/丸の内】

「なかなか便が出ない」「毎日お腹が張ってつらい」——

便秘は誰にでも起こりうる身近な症状ですが、毎日の快適さを大きく下げることがあります。
生活習慣や食事を見直すことで改善できるケースは少なくありませんが、中には大腸の病気や内科疾患が原因で起こる便秘もあります。

本コラムでは、その見極めや対応について専門医の視点から解説します。

水分をしっかり摂る

水分不足は便を硬くし、排便を困難にする大きな原因のひとつです。特に女性では「普段からあまり水を飲まない」「コーヒーや紅茶で済ませてしまう」という方が多く、その結果便秘に悩むケースも少なくありません。

目安としては1日1.5〜2リットル程度の水分摂取が推奨されます。カフェインやアルコールは利尿作用があるため水分補給には不向きで、できるだけ水や麦茶で摂取しましょう。

特におすすめなのが朝起きてすぐのコップ1杯の水です。腸が刺激され自然な便意が出やすくなります。日常生活に「意識的な水分補給」を取り入れることが便秘改善の第一歩です。

食物繊維を意識する

便秘改善に欠かせないのが食物繊維です。便のかさを増やして腸の動きを助ける「不溶性食物繊維」と、便をやわらかくし腸内細菌のエネルギー源となる「水溶性食物繊維」をバランスよく摂ることが大切です。

近年は食生活の欧米化により、肉や脂肪の摂取量が増える一方で、野菜や海藻・豆類といった食物繊維を多く含む食品が不足しがちです。そのため日本人全体の食物繊維摂取量は減少傾向にあり、便秘の増加につながっていると考えられます。

食物繊維を多く含む食品

  • 不溶性食物繊維:キャベツ・ごぼう・大豆・きのこ類 → 腸を刺激し排便を促す

  • 水溶性食物繊維:海藻・こんにゃく・オートミール・果物(りんご・バナナなど) → 腸内の有益な細菌の栄養源となり、短鎖脂肪酸を産生して腸の働きを整える

両者を意識して取り入れることで、腸内フローラの環境が改善し自然な排便リズムにつながります。

発酵食品で腸内環境を整える

ヨーグルト・納豆・味噌・キムチなどの発酵食品は、腸内環境を整える補助的な食品として注目されています。

  • ヨーグルト:乳酸菌やビフィズス菌が腸内で働き、便通改善効果が示された臨床研究があります

  • 納豆・味噌:大豆由来のオリゴ糖や食物繊維を含み、発酵による菌の作用が腸内環境にプラスに働きます

  • キムチ:乳酸菌や食物繊維が豊富で、便通改善や腸内細菌叢の改善効果が報告されています

ただし「発酵食品を食べれば必ず便秘が改善する」という強固なエビデンスは十分ではありません。水分摂取と食物繊維を基本に、補助的に発酵食品を取り入れるのが現実的で効果的です。

朝食をしっかり摂る

朝食は腸を目覚めさせるスイッチです。食事をすると胃が刺激され、その刺激が大腸に伝わって腸の動きが活発になる「胃結腸反射(ガストロコリック反射)」が特に朝に強く働きます。

朝食を抜いてしまうとこの反射が起きにくくなり、便秘につながります。
おすすめは温かいスープや味噌汁など水分を含む食事。さらに食物繊維やヨーグルトを組み合わせれば、腸内環境改善にも役立ちます。

毎朝トイレに行く習慣をつけるためにも、朝食は便秘改善の大切な一歩です。

規則正しい生活と運動習慣

腸は自律神経の影響を強く受けるため、不規則な生活は便秘の大きな要因になります。

① 規則正しい生活リズム

  • 毎日同じ時間に起床し朝食をとる

  • 睡眠不足を避ける

  • 夜更かしを控え、生活リズムを整える

② 適度な運動

ウォーキング・ストレッチ・ヨガなど軽い有酸素運動は腸の蠕動を促します。腹筋運動で腹圧を高めることも効果的です。無理な運動ではなく続けられる軽い運動が大切です。

③ ストレスとの付き合い方

ストレスは自律神経を乱し腸の働きを弱めます。リラックスできる時間を持つことも便秘改善には重要です。

トイレ習慣を整える

便意を我慢しないことが便秘予防の基本です。便意を繰り返し我慢すると感覚が鈍くなり、腸の働きも低下します。

① 朝の排便習慣

朝食後は腸が最も動きやすいタイミング。毎朝トイレに座る習慣をつけると自然な排便リズムが整います。

② 環境と姿勢

落ち着いて排便できる時間を確保しましょう。スマートフォンを見ながら長時間座るのは逆効果で痔の原因にもなります。
また、前かがみの姿勢や踏み台を使って膝を少し高くする姿勢は直腸の角度がまっすぐになり、排便がスムーズになります。

受診を検討すべき便秘のサイン

生活習慣の工夫で改善しない便秘には、病気が隠れている可能性があります。次のような症状があるときは消化器内科を受診してください。

  • 急に便秘が悪化した

  • 血便がある

  • 体重減少や食欲不振を伴う

  • 貧血や強い倦怠感がある

  • 下剤を使っても改善しない

  • 40歳以上で初めて便秘になった

  • 家族に大腸がんやポリープの既往がある

これらは大腸がんや炎症性腸疾患など重大な病気のサインかもしれません。

まとめ|便秘は生活習慣の改善が第一歩

便秘は水分不足や食物繊維不足、生活習慣の乱れなど、日常の要因で起こることが多く、まずは食事と生活習慣の改善が基本です。

一方で、長引く便秘や血便・体重減少を伴う場合は重大な病気が隠れている可能性もあります。
「ただの便秘」と軽視せず、不安なときは消化器内科を受診してください。

当院では内視鏡専門医・消化器病専門医が診療を行い、生活習慣のアドバイスから精密検査(胃カメラ・大腸カメラ)まで一貫して対応しています。

「長引く便秘に悩んでいる」「生活改善をしても良くならない」という方は、ぜひご相談ください。