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「胃がキリキリ痛む」「なんとなく胃のあたりが重い」——
そんな経験はありませんか?
多くの方は「ストレスのせいかな」と考えがちですが、胃痛の原因はストレスだけではありません。胃や十二指腸の炎症、ピロリ菌感染、薬の副作用、さらには胃がんなど、命に関わる病気が潜んでいることもあります。
今回は、胃痛の主な原因と受診の目安、消化器内科で行う検査や治療について、消化器病専門医の立場からわかりやすく解説します。
胃痛の主な原因
ストレスや生活習慣
精神的・身体的ストレスは自律神経のバランスを乱し、胃酸分泌を増やして胃粘膜に負担をかけます。暴飲暴食や不規則な食生活、アルコール・コーヒー・香辛料の摂りすぎ、睡眠不足なども胃痛の大きな要因です。軽い不調と考えがちですが、慢性的に続くと炎症や潰瘍につながることがあります。
急性胃炎/胃腸炎
急に発症する胃の炎症で、細菌やウイルスによる感染が主な原因です。強い胃痛や吐き気、嘔吐、発熱を伴うこともあります。
そのほか、アニサキス(魚介類に寄生する虫)が胃壁に入り込み激しい痛みを起こす場合や、鎮痛薬・解熱薬(NSAIDs)などの薬の副作用によっても急性胃炎が生じることがあります。
胃潰瘍・十二指腸潰瘍
胃酸と粘膜のバランスが崩れ、粘膜に深い傷ができる状態です。みぞおちの痛みは空腹時や夜間に強く出ることが多く、食後に一時的に和らぐこともあります。出血すると黒い便(タール便)が出たり、吐血や貧血をきたす場合もあります。
ピロリ菌感染・慢性胃炎
ピロリ菌は日本人の中高年に多くみられる細菌で、慢性胃炎の最大の原因です。持続的に胃粘膜を荒らし、胃潰瘍や十二指腸潰瘍の再発を繰り返すほか、胃がんの発生に深く関わっています。
感染の有無は胃カメラや尿素呼気試験で確認でき、陽性の場合は除菌治療を行うことで潰瘍の再発予防や発がんリスクの低下が期待できます。
胃がん
初期は無症状のことが多く、気づかれにくい病気です。進行すると胃痛のほか、食欲不振、体重減少、貧血、吐血などを伴うことがあります。早期発見には胃カメラ検査が最も有効です。
機能性ディスペプシア(FD)
内視鏡検査などで明らかな異常が見つからないにもかかわらず、胃の痛みや胃もたれ、膨満感が長く続く病気です。ストレスや胃の運動機能低下、自律神経の乱れが関与するとされます。命に関わる病気ではありませんが、生活の質を大きく下げるため治療が必要です。
薬剤による胃障害
鎮痛薬(NSAIDs)やステロイド、抗血小板薬などは胃粘膜を傷つけやすく、潰瘍や出血の原因になります。薬を中止できない場合は、胃薬を併用して胃を守る必要があります。
肝臓・胆のう・すい臓など他臓器による胃痛
胃の不調と思っていても、実は周囲の臓器の病気が原因になっていることもあります。
胆石・胆のう炎:右上腹部からみぞおちにかけて強い痛みが出るのが典型です。食後に悪化し、吐き気や発熱を伴うこともあります。
膵炎・膵がん:膵炎はみぞおちの強い痛みが背中に響くのが特徴で、急性膵炎は命に関わることもあります。膵がんは初期症状に乏しいため発見が遅れがちですが、みぞおちの違和感や背中の痛み、体重減少や食欲不振などの形で現れることがあります。
肝臓疾患:肝炎や肝腫瘍、肝硬変などによって、胃のあたりに重苦しい痛みを感じることがあります。腹部膨満感や全身のだるさ、黄疸を伴うこともあります。
このように「胃痛」と一言でいっても、その原因は必ずしも胃そのものにあるとは限りません。
放置してはいけない症状のサイン
次のような症状を伴う胃痛は、重大な病気が隠れている可能性があります。自己判断せず、早めに消化器内科を受診してください。
✅️ 胃痛が2週間以上続く、または繰り返す
✅️ 夜間や空腹時に強い痛みが出る
✅️ 体重減少や食欲低下を伴う
✅️ 黒っぽい便(タール便)や血便が出る
✅️ 吐き気や嘔吐がある
✅️ 貧血や強いだるさがある
✅ ️家族に胃がん・大腸がん・すい癌など消化器がんの既往がある
✅️ 解熱鎮痛薬(NSAIDs)や抗血小板薬などを使用中に出現した胃痛
✅️ 40歳以上で初めて胃痛が出た
当院で行う検査
胃痛の原因を正確に調べるために、当院では以下のような検査を行っています。
問診・診察
症状の出方、持続期間、生活習慣、服薬歴、ご家族の病歴などを丁寧に伺います。胃痛の背景にあるリスクを見極める大切なステップです。血液検査
炎症や感染、貧血の有無、肝機能・膵酵素・腎機能などを確認します。ピロリ菌検査
尿素呼気試験、血液検査などで感染の有無を調べます。胃カメラ(上部消化管内視鏡)
胃粘膜を直接観察し、炎症・潰瘍・ポリープ・腫瘍などを詳しく調べます。必要に応じて組織を採取し、がんやピロリ菌の有無を確認します。
当院では鎮静剤を使用した胃カメラ検査も可能で、ウトウトと眠った状態で苦痛を少なく受けていただけます。大腸カメラ(必要に応じて)
胃痛に加えて下痢や血便などの症状がある場合には、大腸の精査を行うこともあります。胃と大腸を同日に検査することも可能です。腹部エコー検査
肝臓・胆のう・すい臓・腎臓など、腹部臓器の状態をチェックします。胆石や膵疾患など、胃痛と紛らわしい原因を評価できます。CT / MRI検査(連携施設)
腫瘍や臓器の異常をより詳しく調べる必要がある場合は、連携施設でCTやMRIを撮影します。画像は読影専門医と当院で確認し、結果をわかりやすくご説明します。
治療について
胃痛の治療は、原因となっている病気や背景によって大きく異なります。当院では検査結果をもとに、最も適切な治療方針をご提案します。
生活習慣の改善
不規則な食事や暴飲暴食、アルコール・カフェイン・香辛料の過剰摂取、喫煙、睡眠不足は胃痛を悪化させます。
規則正しい食生活、刺激物やアルコールの制限、禁煙、ストレスケア(休養・睡眠・運動)といった基本的な生活改善が、症状の軽減や再発予防に重要です。
薬物療法
症状や病気の種類に応じて、以下のような薬を使います。
胃酸を抑える薬(プロトンポンプ阻害薬/PPI、H2ブロッカー)
胃粘膜を保護する薬
消化管運動を整える薬
- 漢方薬(症状や体質に応じて処方します)
ピロリ菌除菌治療
ピロリ菌は日本人の胃がんの約70〜80%に関与しているといわれ、感染者は未感染者に比べて胃がんリスクが5〜10倍高いことが報告されています。
除菌治療を行うことで胃潰瘍や十二指腸潰瘍の再発をほぼ防ぐことができ、さらに研究により胃がんの発症リスクがおよそ30〜50%程度低下することも示されています。
当院では、検査から除菌治療、その後の経過フォローまで一貫して対応いたします。
高度な治療が必要な場合
当院での検査で早期胃がんやその他の腫瘍性病変が見つかった場合には、速やかに連携する高度医療機関にご紹介いたします。内視鏡的切除や外科的治療が必要なケースでも、地域の病院と緊密に連携し、最適な治療が受けられるようサポートします。
まとめ|胃痛が続くときは早めに消化器内科へ
胃痛はストレスや食生活の乱れが原因のこともありますが、胃炎・潰瘍・ピロリ菌感染、さらには胃がんや膵がんなど重大な病気が隠れている場合もあります。
特に症状が長引く、繰り返す、体重減少や黒色便を伴う場合は、早めに専門医の診察を受けることが大切です。
当院は内視鏡専門医・消化器病専門医が診療を行い、胃カメラ検査やピロリ菌検査を含めた精密な診断と、その後の治療・フォローまで一貫して対応しています。必要に応じて連携病院と協力し、患者さんに最適な治療を提供できる体制を整えています。
「胃痛がなかなか良くならない」「ストレスのせいだと思っていたが不安」という方は、自己判断せず一度ご相談ください。
当院は名古屋市中区・伏見駅/丸の内駅すぐ、名古屋駅からもアクセス良好な内視鏡・消化器内科クリニックです。地域のかかりつけ医として、日常的なお腹の不調から専門的な消化器疾患まで幅広く対応いたします。
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