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がんは「早期発見」だけでなく「予防」もできる時代へ
日本人の死因の第1位は「がん」です。厚生労働省の統計によると、2人に1人が一生のうちにがんにかかり、3人に1人ががんで亡くなるといわれています。
「がんは見つかったら命に関わる」「治療はつらいもの」というイメージをお持ちの方も少なくありません。
「がんは症状が出る前に早く見つけることが大事」という意識は広まりつつありますが、実はそれ以前に 一部のがんは「予防できる病気」でもあることをご存知でしょうか。
今回は少し専門的なお話も交えながら、日本人に特に多い 胃がん と 大腸がん が「予防できるがん」である理由と、そのために大切な検査や治療について詳しく解説していきます。
胃がん ― ピロリ菌感染が最大のリスク要因
近年、日本における胃がんは、発生率・死亡率ともに過去数十年間で一貫して減少傾向にあります。その背景には、戦後の衛生環境改善によって若年世代のピロリ菌感染率が低下してきたことがまず挙げられます。さらに2013年からは、慢性胃炎に対するピロリ菌除菌治療が保険適用となり、これまでに850万人以上が除菌治療を受けた結果、胃がんによる死亡者数も着実に減少しています。
とはいえ、現在でも毎年約12万人が新たに胃がんと診断され、約4万人が命を落としているのが現実です。依然として日本人に多いがんのひとつであり、予防と早期発見の重要性は変わりません。
ピロリ菌(Helicobacter pylori)とは?
胃の粘膜にすみつく細菌
幼少期の口移しや食器の共有、水を介して感染することが多い
感染しても自覚症状がほとんどない
ピロリ菌に感染すると、胃の粘膜に慢性的な炎症が起こります。この炎症が長期間続くと、胃潰瘍や十二指腸潰瘍の原因となり、さらに進行すると胃がんのリスクが高まります。
除菌治療で胃がんは予防できる
日本で行われた大規模コホート研究(2010〜2018年、約48,500人対象)では、除菌後6年以上経過した人の胃がん発症リスクは約56%低下することが報告されています。
つまり、除菌治療により将来的な胃がん発症を半分以下に抑えられることが実証されています。特に若いうちに除菌を行うほど、胃粘膜の回復力が高く、長期的な予防効果も大きいとされています。
ピロリ菌の検査方法
胃カメラでの生検(組織検査)
尿素呼気試験(もっとも精度が高い検査の一つ)
血液検査(抗体測定)
便中抗原検査
感染が確認された場合は、抗菌薬と胃酸分泌抑制薬を用いた1週間の内服治療で除菌を行います。
胃カメラは除菌治療と早期発見に必須の検査
ピロリ菌の除菌治療を受けるには、保険診療の場合は胃カメラ検査が必須です。胃カメラで胃の粘膜の状態を直接観察し、がんや前がん病変がないことを確認したうえで除菌治療を行うことが保険適用の条件になっています。
もしすでに早期がんが存在していた場合、除菌だけを行ってしまうと診断が遅れ、治療の機会を逃すリスクもあるためです。
また、胃カメラは早期胃がんを発見できる唯一の検査でもあります。早期の段階では自覚症状がほとんどなく、バリウム検査や血液検査だけでは見つからない病変も、胃カメラなら直接観察して確認できます。
つまり胃カメラは、
除菌治療を行う前に必須となる安全確認の検査
無症状の段階で早期胃がんを見つけられる唯一の手段
として、胃がん予防と早期発見の両方に欠かせない検査なのです。
大腸がん ― ポリープの段階で防げるがん
大腸がんは日本で非常に多いがんのひとつであり、増加傾向が明らかながんとして知られています。
罹患数・死亡数ともに継続的に増加しており、1950-2000年の間に大腸がんの死亡率は、男性で約2.8倍、女性で約1.8倍に上昇しました。
最新の統計では、2021年に約15万5千人が新たに大腸がんと診断され、2023年には約5万3千人が大腸がんで亡くなっています。さらに、将来的には2035〜2039年には罹患数が約21万人、死亡数が約5.7万人に達すると予測されており、今後ますます注意が必要です。
※「罹患数」とは「ある年に新しくその病気と診断された人数」を、「死亡数」とは「その年にその病気が原因で亡くなった人数」を指します。
大腸がんの多くは「ポリープ」から始まる
大腸がんの多くは、「大腸腺腫」という良性ポリープ から時間をかけて発生します。
医学的にはこれを ❝ 腺腫-がん化の連続体(adenoma-carcinoma sequence)❞ と呼び、時間の経過とともに細胞の異常が進み、「高度異型腺腫」というがん化前の状態を経て、「早期がん」、「進行がん」へと進展していきます。
この過程には 数年から10年以上 かかることが多いため、ポリープの段階で発見・切除することが大腸がんの予防につながります。
大腸がん予防のカギは大腸カメラ
大腸カメラ(下部消化管内視鏡検査)は、検査中に発見したポリープをその場で切除できるため、診断と治療を同時に行える数少ない検査です。つまり、「がんを見つける検査」であると同時に、「がんを未然に防ぐ治療」でもあり、大腸がん予防の中心的役割を担っています。
当院では日帰りでのポリープ切除に対応しており、1回の検査で診断から治療まで完結できる体制を整えています。これにより、患者さまの身体的・時間的な負担を最小限にしながら、大腸がん予防に積極的に取り組んでいただけます。
当院での取り組み ― 苦痛を抑えた内視鏡と同日検査
胃カメラや大腸カメラは、一度受ければ終わりではなく、定期的に繰り返し受けることで真価を発揮する検査です。
しかし「つらい」「苦しい」というイメージから、次回の検査をためらう方も少なくありません。
当院では、そうした不安をできる限り軽減し「また受けてもいい」と思っていただけるよう、以下のような体制を整えています。
鎮静剤を使用した内視鏡
ウトウトと眠っている間に検査を受けられるため、苦痛が少なくリラックスして受けていただけます。
さらに、CO₂(二酸化炭素)送気によってお腹の張りや検査後の不快感を抑え、細径スコープの使用で挿入時の違和感を軽減することで、より快適な検査を実現しています。
胃カメラと大腸カメラの同日検査
通院回数が1回で済む
食事制限や下剤の負担が1回で済む
検査当日に腹部エコーや結果説明も可能
忙しい方や、できるだけ効率よく検査を受けたい方に最適です。
快適な検査環境
大腸前処置はすべて「完全個室」
専用トイレ付きでプライバシーに配慮
Wi-Fi・動画配信サービス(NETFLIX)完備
検査後はコーヒーやお茶、おやつを用意し、リカバリーも快適
安全性への配慮
富士フイルム社製の最新AI内視鏡システムを導入し、見逃しリスクを軽減
内視鏡専門医が診察から検査・結果説明まで一貫して対応
緊急時に備えた院内体制(酸素投与・モニタリング設備)を完備
未来の健康は「予防」からはじまります
胃がん はピロリ菌除菌でリスクを下げられる
大腸がん はポリープ切除で未然に防げる
内視鏡検査は「診断」と「予防」を兼ねた方法
がんという病気は「早期発見すれば助かる」というだけでなく、そもそも発症させないように予防する ことも可能です。
胃カメラや大腸カメラは、一度受ければ終わりではなく、定期的に繰り返し受けることで予防効果を発揮する検査です。検査の間隔は一人ひとりのリスクや年齢によって異なるため、医師と相談しながら決めていくことが大切です。
当院では「つらいからもう受けたくない」とならないよう、苦痛を抑えた検査環境を整えています。安心して繰り返し検査を受けていただけることが、皆さま自身はもちろん、ご家族の健康を長く守る最大の力になると考えています。
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